2081 サムエル・ウールマン はくぶん 2009-10-12 03:44:28
林檎マシンの中のファイルを整理していたら、
昔、生命保険のおばちゃんが好きだと言っていた詩が出てきた。

サムエル・ウールマンというアメリカの詩人が書いた“青春”という詩である。

『青春とは人生のある時期をいうのではなく
 心の様相をいうのだ
 年を重ねただけでは老いない
 理想を失うとき初めて老いがくる
 歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失うとき心はしぼむ
 人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる
 人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる
 希望のある限り若く、失望と共に老い朽ちる
 燃える情熱のある限り人は青春の真っ只中にある』

確かそのおばちゃんからもらったパンフレットか何かに、
この詩が印刷してあったように思う。
これを初めて読んだ時、なかなか良い詩だと思って、
自分で打ち込んでファイルとして残していたのである。

実はこの詩はもっと長い。
上記はオリジナルをかなり省略していたようである。
全文は以下の通りである。

『青春とは人生の或る期間を言うのではなく、
 心の様相を言うのだ。

 優れた創造力、逞しき意志、燃ゆる情熱、
 怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、
 こういう様相を青春というのだ。
 年を重ねただけで人は老いない。
 理想を失うときに初めて老いがくる。
 歳月は皮膚のしわを増すが、
 情熱を失うときに精神はしぼむ。

 苦悶や、孤疑や、不安、恐怖、失望、
 こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、
 精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

 年は七十であろうと十六であろうと、
 その胸中に抱き得るものは何か。
 曰く 驚異への愛慕心、空にきらめく星辰、
 その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰、
 事に処する剛毅な挑戦、
 小児の如く求めて止まぬ探究心、
 人生への歓喜と興味。

 人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる。
 人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる。
 希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。

 大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、
 そして偉力の霊感を受ける限り、
 人の若さは失われない。

 これらの霊感が絶え、
 悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、
 皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、
 この時にこそ人は全くに老いて、
 神の憐れみを乞うる他はなくなる。』

この詩は結構有名らしいのだが、
作者であるサムエル・ウールマンをネットで調べても、
なぜかほとんどヒットしない。
おばちゃんからもらった印刷物にはサミュエル・ウールマンとなっていたので、
その名で調べてもみたが、結果は同じである。

この詩を何歳の時に書いたのか。
他にどんな詩を書いているのか。
その二つが知りたいのである。

昔、この詩を読んだ時は、確かに良い詩だと思った。
しかし、今日読んでみて、この詩に対する印象が変わった。
あまりにも年齢と青春をしつこく強調し過ぎているように感じられるからだ。

確かに青春とは年齢だけで決まるものではないだろう。
心が若ければ、年齢に関係なく青春のど真ん中にいると言えなくもない。
そして、そんな活き活きした老人も世の中には多い。

しかし、この詩全体に漂っている雰囲気は、
そんなポジティブで晴れやかなものでない。
老いることへの恐怖、若さや青春に対する異常なまでの憧憬と執着。
まるで怨念とでも言うべき負の感情が行間に満ちていて、
作者の本心を曝け出しているように感じられる。

持たざる者は、持たざる事の正当性を強調するが故に、
持たざる物への執着を自ら露呈するが、
一方で、持たざる物の代価を追求するあまり、
持たざる事の正統性を見失う。

サムエル・ウールマンは、老いることが余程恐かったのだろう。
彼の価値観の中では、若さが重要な地位を占めていたのだろうと思う。
彼にとって老いることは無価値であり、若さこそが絶対的価値。
現実に若さを取り戻すことはできない。
しかし、それは違う形で取り戻せるのだと自分自身を納得させようとした。
つまりそれが、この“青春”という詩なのだろう。
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