6391 おいら はくぶん 2015-01-08 03:38:53
“おいら”という言葉がある。
男性が自分を指す時に使う言葉である。
“俺”“僕”“わし”など、男性が自分を指す言葉はいくつかあるが、その中で“おいら”はちょっと日常離れした言葉であろうと思われる。
先ず普段の会話で面と向かって使っている人を見たことがない。
従って、特別な場所や環境でのみ使われる言葉であるようだ。

語源的には、俺等の意であり、“おれら”が訛ったものであるらしい。
江戸時代には女性も使ったらしい。
しかし、語源はそうであっても、現在使われている“おいら”に、俺等の意は全くない。
完全に自分一人を指し示す言葉となっている。

日常会話では殆ど使われることのない“おいら”。
しかし、ある特別なシチュエーションでは、好んで使われる。
それは、“俺”と言うと語気が強く敬遠される恐れがあり、“僕”と言うと幼稚でなめられる危険性がある場所である。
そういう場面で“おいら”は格好の一人称代名詞であり、自分を没個性的な状態に置きたい者達にとって非常に使い勝手のいい言葉なのだろう。

しかし、この言葉を使っている人間を、俺は信用しない。
過去の経験を通じて、八方美人、風見鶏、よいしょ人間、といった低俗な人間であることが多いと知っているからだ。
なぜこの言葉を使う人間に、そういうタイプが多いのだろうか。
それは敵を作らないために、敢えてこの言葉を選んでいるからだ。
だから、そういう人間達がたまに見せる本性は、普段の姿からは想像もできないほど高圧的で傲慢なことに驚く。
自分の醜い本性を隠すために使う言葉。
“おいら”とは、俺にとってそういうイメージのある言葉である。
メッセージ文字数:669/691