762 胴上げ はくぶん 2008-12-15 21:20:26
定年退職の送別会で、60歳の男性社員が部下に胴上げされた際、
落下して大怪我を負い、約10ヵ月後に死亡したらしい。

冗談のような、嘘のような話だが、事実。

胴上げというのは危ない。
みんな平気でやっているようだが、下はコンクリートである。
球場なんかだと下は土で、多少クッション性もあるが、
飲み会のお開きときたら、そこは大抵コンクリート。
頭を打てば大怪我になるのは必至。

管理人が学生の頃、刑法ゼミで一つの課題があった。
追いかけられた人間が走って逃げる最中に運悪く転倒し、
打ち所が悪くて、そのまま死亡した場合、
それを追いかけた人間は罪に問われるのか、というものだった。

管理人ともう一人が担当する順番だった。
二人は互いに異なる解釈を一つにまとめることなく、
敢えてそのまま、違う見解、正反対の結論を発表した。
授業の最後にゼミの教授が、さも嬉しそうに、
客観的判断などといっても結局はこんなものと、
皮肉たっぷりにその授業を締めた事を思い出した。

その教授の持説は学会でも少数派で、
最高裁の判例や東大の学説とは真っ向から対立しているのだが、
確かに、その課題では最も矛盾がないように思われた。

胴上げで死亡した定年退職者。
この事件をどんな裁判官が担当するかで、判決は変わってくるだろう。
もしかすると無罪判決を出す裁判官もいるかもしれない。
しかし、もしこの事件をそのゼミの教授が担当したとしたら、
追いかけた方の人間を、彼はきっと重い刑に処するだろう。

彼に言わせれば、コンクリート上で胴上げすること自体が、
既に犯罪を犯しているということなのである。
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