たった一語の願い 田舎に小さな小さな社(やしろ)がある。 小屋ほどの本殿で、神職も誰もいない素朴な神社だ。 からだの悪いところを、数え年の数だけ書いて 奉納するとよくなると信じられ、 小さな社殿には、びっしりと紙が貼られている。 「足」「足」「足」「足」「足」・・・・ 「高血圧」「高血圧」「高血圧」「高血圧」「高血圧」・・・・ どれも、70〜80回書いてある。高齢者が多いんだろう。 その中で、やけに白さが目立つ紙があった。 紙の真ん中に 「心 臓」 と1回だけ書いてあった。 胸が痛かった。 神様、本当にいるのだったら、 その1歳にもならない子を治してやってください。 ワタシは、たいしたこともない悩みを書くのをやめて帰った。