陪審員 ある婦人が陪審を務めるべく召喚された。 婦人は死刑がよいことだとは思わないし、自分の個人的な考えが裁判の進行の妨げになってはいけないので 免除してほしいと申し出た。 しかし、官選弁護人は婦人の思慮深さと落ち着いた様子が気に入って 陪審を務めるよう説得にかかった。 「奥さん、これは殺人事件ではありません。単純な民事裁判です。  誕生日のプレゼントとして台所を改装するための費用として約束していた  百万円を賭博ですってしまった夫を妻が訴えたものです」 「あら、分かりましたわ」婦人は承知した。 「わたし、陪審を務めますわ。死刑についての私の考え、間違っていたかもしれませんわ」