お姉さん 小学生の頃のこと。 近所に大きな本屋があって、文房具なんかもたくさん売ってた。 ある日友達と一緒にそこへ買い物に行った。 消しゴムやら定規やら、それぞれ欲しいものを見つけて買おうとした時。 所持金確認したら10円足りない。 「おわ〜、10円たりねぇ!」 「マジで?俺ピッタリしか持ってねえぞ?」 「ちくしょ〜〜〜なんでだよ〜〜〜」 別のにするかあきらめるか、どちらも選べなくて困り顔で立ち尽くしてたら、 横からポンポンって肩を叩かれて、見れば綺麗なお姉さんが。 「これ、使って」 ニッコリ笑って10円玉一枚、すっと俺の肩の上に置いた。 あ、落ちる、と思って慌ててそれを掴んだ瞬間、 「じゃあね」 声だけ残してどこかへ消えてしまった。 一瞬のことで、あっけにとられて、お礼も何も言えなかった。 「せっかくもらったんだし、使えばいいんじゃね?」 友達の言葉におされて、感謝しながら買い物を済ませた。 それからしばらく、毎日10円玉持ってその本屋へ行ってみたけど、 お姉さんに出会えることもなく、やがて本屋もつぶれて無くなった。 ずっと昔のことだけど、今でも覚えてる。 あのお姉さん(今はもうおばさんだろうな)、今もどこかで元気にしてるかな。