オヤテキ 狼の子が森で狩りをしていました。 彼は今日の晩御飯のおかずを探していました。 「父さん母さんはどうして僕に狩りをさせるんだろう?  僕だって他の子のように遊びたいのに。」 無事獲物をしとめて帰る時に、 狼の子は狐の子に会いました。 狐の子には親がいませんでした。 狼の子「君のところはいいね。     きっと親に獲物をとって来いとは言われないんだから。」 狐の子「そんなことないさ。     獲物をとって来いとは言われないし     親代わりの山犬は優しいけど、     親じゃ無いからあんまり甘えられないし、     餌なんて山犬の義兄弟に奪われっぱなしだし、     近々自分で狩りをしなきゃなんないさ。     それにこの先、親孝行しようにも     親はいないんだぜ?     親がいなきゃ俺は生まれていないんだから     親がいることはそれだけで幸せなことさ。     感謝させてもらえるんだから。」 狼の子はきっとそうだなと思いました。 狐の子と別れてしばらく行くと、 狼の子は狸の子に会いました。 狼の子「君のところはいいね。     きっと親に獲物をとって来いとは言われないんだから。」 狸の子「どうした?落ち込んでるのか?     そりゃ俺の親は俺に狩りをしろとは言わないけど、     毎日狩から父親が帰ってくると俺のことを殴るんだ。     母親は止めに入って殴られて、     父親がおとなしくなると今度は母親が     俺のせいだって悪口雑言     ぜってー近いうちに出てってやるさ、あんなウチ。     お前のところの親はお前を殴らないだろ?     悪口も言わないだろ?     何でもない平凡な日常が本当は     すげー幸せなんだぜ?」 狼の子はきっとそうだなと思いました。 狸の子と別れてしばらく行くと、 狼の子はイタチの子と会いました。 狼の子「君のところはいいね。     きっと親に獲物をとって来いとは言われないんだから。」 鼬の子「ははは、確かにそうだ。     でも父親が狩をしないで寝てばかり。     たまに起きりゃ女のところへ行って何日も帰ってこない。     母親と俺が狩をするしかないだろ?     その母親も何度替わったか分からないし、     今は母親もいなくて俺が一人で狩りをしてるんだ。     お前のところの親は女遊びはしないだろ?     ずっとお前の傍にいて何遍も替わったりしてないだろ?     それはとても幸せなことなんだぜ?」 狼の子はきっとそうだなと思いました。 狼の子は巣に帰ると 親のために獲物を食べやすくちぎって急かす親の前に置き、 一人で巣を掃除して寝床を準備して、 親が寝ると明日の狩りの準備をして、 「ぼくはとても幸せなのに文句ばかり言って、  親不孝な子供だな。  父さん母さんごめんなさい。」 と言って眠りました。 夜中に狼の子がトイレをするために巣の外へ出た時、 フクロウのおじいさんが狼の子に言いました。 「お前さんは幸せじゃよ。  親に恵まれる幸せもあるが、  親に恵まれない幸せもあるんじゃから。  大人になればそのことがよく分かる。  お前さんの友達の子らにもそう伝えてあげなさい。」 それだけ言うとフクロウのおじいさんは夜の森へ飛び去りました。 狼の子は、 友達なんていないし 人の親の悪口を言うなんて ひどいおじいさんだなと思いましたが、 少し嬉しい気持ちで巣に戻りました。 何年かして彼らはみんな 他のあらゆる動物に尊敬される 森の偉大な動物になりました。