よけいな一言 電車に乗っていたら、おならがしたくなった。 不運にも、隣にコワモテのお兄さんが座っていたので、 気づかれたらマズいなと思い、私は必死に我慢していた。 そのとき、そのお兄さんが尻のポケットに入れていた 携帯のバイブの振動が座席越しに伝わってきたので、 これに紛れさせてしまおうと思い、タイミングを合わせて放屁した。 が、 「ぷぅ〜〜」 と、無情にも私のクラリネットは軽快なサウンドを奏でた。 電車はちょうど停車中であって、 私の演奏は、気持ちの良いくらいに車両内に響き渡った。 隣をチラ見すると、案の定、お兄さんがグラサン越しにこっちをにらんでいる。 やっべ〜と思った矢先、ヤツは口を開いて私にこう言った。 「マナーモードにしとけや!」 ん、と思って横を見ると、なんかヤツは自分の言ったセリフにうけてしまって、 笑いをこらえているようだった。 なんだか知らないが助かった、と思って、調子にのって私は言った。 「すいません、着拒してください」 彼が真顔に戻るのを見た次の瞬間、 私のわき腹には強烈なボディブローが炸裂していた。