本物のバカ ある日、金持ちの男が二人でコーヒーを飲みながら話していた。 一人が相手にこんなことを言った。 「あのな、俺の運転手は本物のバカなんだ。嘘だと思うなら証拠を見せてやろう」 と言って、自分の運転手ベンを呼んで言いつけた。 「ベン、この10ドルを持って行って、あそこのショールームでメルセデスを買ってきてくれ」 用事を言いつかったベンが答え。 「はい、ご主人様。ただいま行ってまいります」 ベンは大急ぎでショールームに向かった。 金持ちの男は友達に向かっていった。 「ご覧の通りさ。あいつは本当にバカなんだから」 するともう一人の金持ちが言った。 「あの程度ならなんていうことないさ。もっとひどい阿呆を見せるよ」 と言って、自分の運転手のアリを呼びつけた。 「アリ、今すぐに家にいって、俺が家にいるかどうか見てきてくれ」 「はい、ご主人様。ただいま行ってまいります」 アリは家に向かって走っていった。 「見たかい? あの通りさ。俺がここにいるんだから自宅にいる筈がないっていうのに、  あいつの頭はそれすら分らないんだ」 暫くして二人の運転手が道端で出会った。 ベンがアリに話しかけた。 「俺のボスはすごくバカなんだ。俺に10ドルよこして、  あそこのショールームでメルセデスを買って来いっていうんだけどさあ、  ボスは今日が日曜日でショールームがしまってるってこと知らねえんだよ」 アリも言った。 「俺んとこのボスはもっとひどいぜ。ボスが自宅にいるかどうか見て来いって俺にいうんだ。  ボスはケータイを持ってんだから、自分で電話で確かめてみりゃあいいっていうのにさあ」